遺伝子 DNA


前節でみたように、化学反応の袋を考えると、陽に遺伝子の役割をもつかを決めなくても分化や発生過程の原型は現れる。
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つまり、この表現型の文化は突然変異によるものではなく、同じ遺伝子をもった個体が大腸菌の間の相互作用を通して分化していると考えられる。
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こうしてみると、・・の表現型=関数(遺伝子:環境)という仮定をおかねばならない必然性はない。そこで、これをはずした場合にどのような進化過程が得られるか・・・
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モデル計算の結果を・・・に示した。
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この過程は、もし(3)だけ見れば、同一種からランダムな突然変異によって異なる遺伝型の二種が分化したかのようにみえる。しかし(1)(2)をみれば、遺伝子の変化が“原因”で種が分化したというよりも、むしろ、ある状況で表現型が分化し、それが遺伝型に“固定”されたと見なすべきであろう。
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現在の分子生物学、そして“情報”を重視する現代社会では、シンボル側からパターン側を説明するのに重点が置かれている。たとえば、細胞の異なる状態はしばしば遺伝子の発現といった・・・略・・・たとえばルールとパターンの関係についていえば、各部分から全体を作る設計図を求め、描写するのが今の主流の生物学であるが、複雑系の立場ではむしろ、安定した設計図がいかに自発的に生じるかを考える。

そして、こうした問題は社会の発展過程の研究ともつながるであろう。ヒトの数が増すにつれて分化が始まり、階層構造をなす。さらに、この階層構造は社会規範へと固定されていく。また、多様な化学反応が互いに触媒していくシステムとしての生命の誕生過程は、多様な商品が互いに触媒的に再生産される状態としての資本主義システムの出現と共通な数理的構造をもつと思われる。